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2017年7月7日


 概況
  
  • 米国のビジネス・サイクルの拡大は続いており、その原動力はトランプ大統領を誕生させた選挙の影響よりも、民間部門の債務返済や銀行の回復、消費者金融の改善、低インフレ、低金利の持続などの根本的ファンダメンタルズによるものです。
  • 米国の景気拡大は今後更に数年間は持続可能だと見ています。GDPの拡大が企業や家計の収益増に反映され、株式や不動産、その他のリスク資産の更なる値上がりを支援することでしょう。
  • このメイン・シナリオに対する主なリスク・シナリオは、米国連邦準備制度理事会(FED)が、利上げではなく、民間部門の貸出の伸びを抑えることによってクレジットを急速に引き締めることです。これは、たとえ金利が低水準にとどまったとしても、FEDが(保有有価証券の再投資の削減により)自らのバランスシートを縮小することによって起きうることです。
  • 私は、6月の0.25%利上げに続き、FEDが年内にもう1回、0.25%の利上げに踏み切ると予想しています。また、FEDは10月か11月にバランスシートの縮小に着手するとも予想しています。
  • 米国の消費者物価の伸びは当面は鈍化し、労働市場における一層の人手不足や連邦財政赤字の拡大なくしては、中期的にも緩やかにしか持ち直さないだろうと見ています。その理由は、マネーサプライやクレジットの伸びが4〜6%程度で依然として抑制されているからです。
  • ユーロ圏では景気が改善し、選挙による障害がユーロの通貨システムの脅威となるような事態は回避されました。9月のドイツ総選挙が残る不透明要因ではありますが、ポピュリスト政党が中道右派もしくは中道左派の既存政党を深刻に脅かすようなことはもはやありえないでしょう。
  • 英国が3月29日に欧州連合(EU)からの離脱(「ブレグジット」)を通告し、英国とEUとの交渉が始まりましたが、この交渉は今後2年間、だらだらと続くことでしょう。その間の交渉におけるいかなる前進も後退も直ちに英ポンドや英金利に反映され、不安定な相場展開になることは避けられないでしょう。
  • 英ポンドの下落による輸入インフレが英国の実質消費を減退させている一方で、ブレグジットのプロセスをめぐる不透明さは海外からの対英直接投資を徐々に細らせるでしょう。
  • 6月8日の総選挙の結果、メイ首相率いる与党の保守党は単独過半数議席を失い、議会運営のため、北アイルランドの民主統一党(DUP)の閣外協力を仰ぐことになりました。メイ首相の行動の自由は多くの政策分野において大幅に奪われることとなりました。
  • 一方、2016年8月に英国中央銀行のイングランド銀行(BOE)が実施した貸出促進策は国内でインフレを生み出し、これが英ポンド安による輸入インフレに追加されるリスクがあります。こうした事態に対応するため、BOEは6月27日に英国の民間銀行の必要資本額を引き上げました。
  • 日本経済はわずかに堅調に成長しているようですが、物価上昇率は依然として2%を大きく下回っています。安倍首相と黒田日銀総裁による政策は、目標を達成するに至ってはいません。
  • 中国は、共産党大会を秋に控え、経済を軌道上に維持するためにクレジットの緩和と引き締めを交互に続けています。対外貿易統計はわずかに改善しましたが、これは新たな輸出主導の経済ブームの始まりを意味しているわけではありません。石炭や鉄鋼といった基礎素材産業における過剰設備のほか、銀行システムにおける不良資産の増加が新規投資の伸びを抑えています。
  • 対外面では、中国当局は資本流出を抑制し、資本流入を促すよう試みており、ここ数カ月の人民元の安定につながっています。
  • コモディティ分野では、米国のシェール・オイルの増産と現在の状況下で石油輸出国機構(OPEC)がカルテルを維持することの難しさにより、原油価格は依然として下落圧力を受けています。主要な工業金属価格は、トランプ大統領の大幅なインフラ支出計画への期待から上昇しましたが、同計画がとん挫する可能性が高まるにつれ、上昇が失速に転じました。こういった状況から、2017年にコモディティ価格が上昇する可能性は後退していると見られます。

米国

就任から約2四半期が経過したトランプ大統領は、熱心な支持者からの支持は続いてはいるものの、新政策のゴールは当初のスケジュールからはるかに遅れを取っています。移民に関する大統領令は裁判所によって無効にされる一方、医療保険制度改革(オバマケア)の見直しはとん挫し、議会上下院によって修正を余儀なくされています。所得税・法人税減税、国境調整税の導入、海外利益の還流スキームなどに関する計画は先送りされました。インフラ支出計画(原案では、今後10年間で1兆米ドル、そのうち連邦政府が4分の1、民間が4分の3を負担)は依然として計画中の段階です。これまでにトランプ大統領が達成したことと言えば、キーストーンXLパイプラインの建設認可や、ゴーサッチ最高裁判事の任命、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)や気候変動に関するパリ協定からの脱退と北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しの決定ぐらいのものです。大統領はまたいくつかの石炭火力発電所の閉鎖を差し止めました。政府の運営は、非上場の民間不動産会社を経営するよりも難しいことが明らかになってきました。

一方、2016年11月から2017年6月にかけてS&P500指数が17%も上昇したことは、米国大統領選挙でのトランプ氏の勝利が貢献した面もあったでしょうが、私は景気サイクルが強まったせいだと考えています。短期的には、企業の収益成長、鉱工業生産やGDP成長率といった実体経済を直接反映する指標は明らかに精彩を欠いています。これらの指標は今後数カ月間に強含む可能性はありますが、トランプ大統領が目標とする「最低3.5%、できれば4%」の実質GDP成長を達成するには、途方もないパフォーマンスの上振れが必要になるでしょう。そのようなゴールへの到達に役立つとして期待される施策には、大統領が意欲を見せている銀行規制に関するドッド=フランク法の緩和やインフラ改善のための投資計画があります。もし、これら施策が実行に移された場合の副産物としてマネーサプライやクレジットの伸びが加速するようであれば、小売売上高や名目GDP、企業収益といった名目指標が改善を始めることは大いに考えられますが、今のところ、そうした兆候はほとんどうかがえません。特に原油価格の低迷は、それが続くようであれば、今年後半の設備投資の不振につながることでしょう。

トランプ大統領就任後も、FEDは段階的な金融政策の正常化(引き締めではありません)を続け、6月14日の連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%引き上げ、1.00〜1.25%としました。

FEDは最近、今後数年間でどのように自らのバランスシートを縮小させるつもりかを明らかにしました。同計画は、保有している米国債と住宅ローン担保証券(MBS)の完全売却は避け、現在は満期を迎えた債券の償還金を新たな債券に再投資しているところを、今後は一部について再投資せず、そうした再投資しない償還金額を徐々に増やしていくというものです。再投資しない償還金額は、当初(おそらく今年9月か10月)は月額100億米ドルでスタートしますが、1年を経過すると同500億米ドルまで増える予定です。これは、公的投資家として債券を引き受けてくれていたFEDの代わりとなる民間投資家を募るために、米国債とMBSの入札による新規発行額を増やす必要があることを意味します。こうしたことについて、イエレンFED議長は6月14日のFOMC後の記者会見で、FEDが利上げを続ける背景として起き得ることだと楽観的に述べていましたが、おそらくは見当違いである可能性が高いです。月額500億米ドルもの債券を売ることは、長期金利を上昇させ、金融環境を引き締め、銀行の貸出やマネーの伸びを抑えてしまうリスクがあります。FEDは注意深く事を進める必要があるでしょう。

米国の銀行貸出の伸びは既に、2016年の9-10月以降の年率8%から、2017年5月には同+4%に鈍化しており、同期間にM2の伸びは年率+8%から同+5.5%へと低下しました。債券発行額は、1.54兆米ドルと記録的な水準となった2016年の後、2017年1-3月期も4,800億米ドルと引き続き旺盛ですが、警告サインが点滅を始めました。
私は、米国の実質GDP成長率が、2017年には2016年よりもわずかに改善して+2.1%、2018年には+2.4%になると予想しています。消費者物価指数(CPI)の上昇率は2017年平均で+2.1%を見込んでいます。


ユーロ圏

5〜6月にフランスの大統領選挙と国民議会選挙が終了したことで、欧州の政治カレンダーは秋のドイツ総選挙まで小休止となります。フランスでマクロン氏が大統領選挙と国民議会選挙に勝利したことで、少なくとも、待ち望まれた労働市場改革に手を付けられることになりましたが、労働組合による激しく、暴力的でさえある抵抗が予想されます。一方、EU残留国と英国とのブレグジットをめぐる交渉が始まり、今後1年半にわたり、温度差が異なる状態で進むことはほぼ間違いないでしょう。

欧州の経済状況は、米国と同様にセンチメント指標が実体に先行する形ではありますが、徐々に改善してきています。2017年1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比+1.9%にまで高まり(2016年は+1.7%)、前期比年率では+2.3%と、2015年1-3月期以降で最も好調となりました。ドイツのIFO景況指数は6月に115.1と、世界金融危機後、2010年に初めて改善して以降の最高水準となりました。その他では、フランスの実質GDP成長率が前期比+0.5%、前年同期比では+1.1%に改善し、6月の総合購買担当者指数(PMI)は55.3と健全な水準に達しました。このことは景気の勢いが正しい方向に向かっていることを示していますが、フランスの失業率は9.6%と、ひどく高い水準にとどまっています。ユーロ圏における最も勇気づけられる進展はおそらく、マクロン大統領の就任を受けた欧州レベルでの財政統合と、同氏が提案するEU共通予算・財務相ポスト創設を検討しようとの気運が明らかに高まっていることです。欧州周辺国では、アイルランドとスペインが力強く回復している一方で、イタリアは、1-3月期の実質GDP成長こそ+1.2%と緩やかな改善を見せてはいるものの、長引く低成長の結果として、引き続き銀行破綻に苦しんでいます。

金融政策面では、欧州中央銀行(ECB)が現行の量的緩和策の下、月額600億ユーロの債券購入を続けており、政策理事会の上級メンバー達は2017年12月もしくは物価上昇率が回復するまで債券購入プログラムを維持することの必要性を引き続き訴えています。実質成長率の改善により、ダウンサイド・リスクが概ね解消し、今後のリスクもバランスが取れているとECBが述べることができるようになった一方で、物価上昇率は低下しました。5月には統合消費者物価指数(HICP)が前年同月比+1.4%、食品とエネルギーを除いたコア指数は同+0.9%に鈍化し、いずれもECBの目標である「2%に限りなく近い2%未満」の水準を大きく下回っています。引き続いての問題があるとすれば、それはECBの量的緩和策で選択している戦略、すなわち、債券を銀行以外からではなく銀行から購入することにより、家計や企業の購買力を押し上げるのに失敗していることです。その結果、もしECBの資産購入が全て銀行以外から行われていたならば実現可能であったろうM3の適正な増加ペースが7〜8%であるにもかかわらず、4月の伸びは前年同月比+4.9%に鈍化しました。

ユーロ圏の2017年の実質GDP成長率のコンセンサス見通しは+1.8%に高まり、私の予想である+1.7%をわずかに上回りました。物価上昇率は、不十分なM3の伸びが続くと予想されることから、2017年を通じては+1.2%と、コンセンサス予想の+1.6%を大きく下回る見込みです。


英国

2017年1-3月期は、ブレグジットの決定が英国経済に与える負の影響を統計が本格的に反映し始めた最初の四半期となりました。実質GDPは、前年同期比では、2016年の4-12月の高成長のおかげで+2.0%成長を確保しましたが、前期比ではわずか+0.2%成長にとどまりました。実質ベースの家計の消費支出は2016年10-12月期の+0.7%から2017年1-3月期は+0.3%に減速し、2016年6月の国民投票でブレグジットが決定して以降の9カ月間に英ポンドが下落したにもかかわらず、輸入が増加する一方で輸出は減少しました。これは、為替レートの変化(通貨の下落)に対する対外収支調整で典型的に見られる「Jカーブ」パターンで、当初は収支が悪化するものの、時間が経つと改善するものです。これとは対照的に、企業の投資は、悲観的な見方に反して、前四半期の0.9%減少から、1-3月期は0.6%増加に転じました。

米国やユーロ圏と同じく、英国のサーベイ統計は概して引き続き堅調でした。たとえば、5月のPMIは製造業が56.7、サービス業が53.8で、総合PMIは54.4でした。この数値は2014-15年頃からは低下していますが、ブレグジットが決定した国民投票直後に比べれば、センチメントがかなり回復したことを示しています。

政治面では、3月29日に英国政府がリスボン条約第50条に基づくEU離脱の通告を行い、欧州委員会と英国政府との間で離脱条件をめぐる2年間の交渉が始まりました。これらの交渉は複雑で緊張したものとなり、英ポンドや英国債市場、英国内での投資意欲を圧迫する見込みです。また、そうした雰囲気は、6月8日に行われた総選挙の結果を受けて、さらに複雑なものとなりました。この総選挙は、メイ首相の決断により実施の運びとなりましたが、与党の保守党は下院の単独過半数議席を割り込み、過半数議席維持のために北アイルランドのDUPの閣外協力をあおぐ結果となりました。

金融政策面では、BOEは昨年8月以降、金融政策を据え置いてきましたが、6月27日に「カウンターシクリカル資本バッファー」を0.5%(年内11月にさらに0.5%)引き上げ、英国の民間銀行の最低自己資本要件を合計で114億ポンド増やすことを決定しました。この決定は、BOEがジレンマに陥っているときに発表されました。一方では、消費者信用が急速に伸び(2016年を通しては10.3%)、家計債務の悪化が金融機関の信用力に悪影響を及ぼす可能性があるため、BOEはクレジットを引き締める必要があります。しかし他方で、ブレグジット交渉の間は、設備投資と雇用を支えるため、BOEは金利を低水準に維持したいところです。私は、昨年4月には4%だった貸出の伸びが8月には8%にまで加速していたにもかかわらず、同月の0.25%の利下げと新たな量的緩和策の導入により新たな資金を経済に注入したことは、BOEの過ちだったと見ています。これこそが、昨年6月の国民投票以降、消費者支出が堅調に推移している主たる理由であり、マネーサプライとクレジットが急速に伸び続けるようであれば、直近の資本比率調整は殆ど効果を発揮しないだろうと考えられます。

クレジットの加速は、英国の5月の総合CPIが前年同月比+2.9%、コアCPIが同+2.6%と、BOEや金融市場の予想を大きく上回る水準に急上昇した主たる理由でもあります。英ポンド安による輸入インフレに、現在では国内インフレが加わり始めました。BOEの金融政策委員会(MPC)が金融政策の現状維持を決めた6月会合での委員の投票結果が5対3と比較的僅差であったことから、現在の市場のコンセンサスでは、MPCが利上げ方向に傾き始めていると見られています。6月会合以降、BOEのチーフ・エコノミスト(兼MPC委員)のハルデーン理事が遠からず利上げへの投票を考えていると発言しました。総じて、インフレを抑えるため、MPCは遅かれ早かれ利上げに踏み切るだろうと見られます。

2017年の英国に関しては、+1.4%の実質GDP成長と+2.7%のCPI上昇を見込んでいます。


日本

日本の2017年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率で+1.0%、前年同期比では+1.3%となりました。個人消費支出の緩やかな加速と引き続いての輸出の伸びが成長率の原動力となりました。2016年10-12月期の円安が輸出と企業収益を押し上げました。ただし、企業収益の増加が賃金の上昇という形で労働者に還元されるかどうかは、日本の労働市場がタイト化している現実を踏まえても、疑わしいところです。ちなみに、2017年4月の失業率は2.9%の低さ、有効求人倍率は1.48と、1970年代初期の好景気以来の高さに、それぞれ達しました。ちなみに、2014年以降、契約賃金もしくは給与は年にわずか0.3%、現金給与総額も年率0.6%しか増えておらず、今後もともにそれほど大きな変化はないものと思われます。ちなみに、このタイトな労働市場と賃金の低い伸びの同時条件は、フィリップス曲線がインフレに関する適切な理論ではないと私が考える強力な根拠となっています。

日本経済を、金融緩和、財政出動、構造改革の「3本の矢」を通して活性化しようとする「アベノミクス」政策は4年半にわたって実行の途上にありますが、経済は政府が期待したほどの力強い反応は見せていません。労働力と長期生産性の伸びで構成される概念である潜在成長率は、日本の場合、労働力が減少し、生産性も2010年は1%を下回るにまで低下していることから、年率0.7〜0.8%程度しかありません。一方、黒田総裁の指揮の下、日本銀行のバランスシートは、「量的・質的金融緩和」策が実施された2013年3月以降に200%も拡大しました。この日銀の資産の大幅な拡大にもかかわらず、日本の商業銀行預貸金は4年間でわずか12%、年率約3%しか伸びませんでした。銀行の一般的なリスク回避行動はさておき、こうした事態となっている原因は、日銀の量的・質的金融緩和策に、非銀行民間部門からではなく銀行から資産、しかも短期証券のみを購入するという不備があったからです。実際のところ、日銀は民間銀行を回避して民間銀行以外から証券を購入することにより、新たな預金を直接生み出してはおらず、貸出と預金の創造においては引き続き民間銀行に依存しています。

その結果、日本の広義マネーサプライであるM2は、2013年4月以降の平均で年率+3.6%にとどまっています。M2が有意義なインフレや経済成長を生み出すには、長期間にわたり年間6%ほどの伸びが必要なはずですが、実際の伸びはそこまで十分急速なものではありません。日本の総合CPI上昇率は4月は前年同月比+0.4%で、生鮮食品とエネルギーを除いたいわゆる「コアコア」CPIは同+0.0%と、前年から横ばいでした。

日本の実質GDP成長率は2017年平均で+1.1%、総合CPI上昇率は(国内のマネーサプライの伸びではなく)若干の円安に支えられて+0.5%に上昇するだろうと予想しています。


中国と新興国

中国経済は、2016年に様々に異なった傾向の政策を経験した結果、セクターごとにパフォーマンスのばらつきが見られました。一方では、大幅な刺激策が実施されました。政府は財政支出を2015年末の前年比8%から2016年末には同18%まで加速させ、中央銀行である中国人民銀行(PBoC)は政策金利である銀行貸出金利と預金金利を低位に据え置きました。同時に、当局は住宅ローンの貸出基準を緩和し、自動車販売税を10%から5%に引き下げました。他方で、中国国内のクレジットの伸びは2016年の1年間で25%から17%へと急速に鈍化し、自動車販売税は2017年から7.5%に引き上げられました。また、PBoCは2016年11月に金利の高め誘導を始め、2017年になってからの3カ月物上海銀行間貸出金利(Shibor)と同レポ金利の上昇幅は約200ベーシス・ポイントに達しています。これは、一部には人民元の下落を防ごうとPBoCがFEDの利上げに追随していること、また一部には、PBoCが住宅価格の再上昇を抑えようと躍起になっていることがその理由です。北京や上海、広州のような第1級都市の住宅価格は昨年9月に前年比で28%上昇していましたが、この5月には同+13.5%まで上昇が鈍化しました。

これらの相反するように見える政策変更については、第19回中国共産党大会がこの秋に北京で開催されることが主たる理由だと言われています。同大会は、習近平国家主席が国務院のメンバーを改選し、忠誠心の強い人物を登用することで権力の集中を図る好機と見なされているからです。同大会を控え、政治的には、景気の勢いを維持することよりも全ての安定を保つことの方がはるかに大切です。そのため、短期的な問題が高じて本格的な危機となることを防ぐために、ある時には緩和し、ある時には引き締めるといった一連の政策変更が必要になるのです。

2017年1-3月期の中国の実質GDP成長率は前年同期比+6.9%と、2016年の各四半期の成長率である6.7〜6.8%よりもわずかに高まりました。しかし、李克強指数(李克強首相にちなんで名づけられた、速報データに基づく実質GDPの推計値)は2016年以降に急上昇し、鉄鋼や石炭、電力などの基礎産業の一時的な回復を映し出しています。対外面では、中国の輸出もまた昨年10月時点の前年比-7.4%(米ドルベースの3カ月移動平均)から今年5月には同+11%に回復してきました。輸入はさらに急速に回復して3月に同+25%のピークをつけた後、5月は+15.6%に鈍化しました。この最近の輸入の回復は、ベース効果(2015年の遅くから2016年の初め頃にかけてコモディティ価格が急落したことや同時期の為替レートの変化)が剥落したことに伴っている可能性があり、そうだとすると、明快な結論を導き出すことには慎重になるべきですが、それでも長きに及んだ世界貿易の不振がついに和らぎ始めているようです。

中国は群を抜いて巨大な新興国であり、世界最大のコモディティ購入国であることから、その経済成長は(もしくは成長鈍化は)、先進国か新興国かを問わず、多くのコモディティ輸出国に多大な影響を及ぼします。もし中国が今後1-2年にわたり国内経済の安定を維持できるようであれば、コモディティ輸出国の景気は相当改善するでしょう。しかし、先進国で標準以下の景気回復が続く見込みであることを踏まえると、中国単独で全てのコモディティ産出国を支えることは不可能かもしれません。2017年の中国経済の予想では、私は+6.5%の実質GDP成長と+2.1%のCPI上昇を予想しています。

中国を含めた地域的なサプライ・チェーンのネットワークに組み込まれている東アジアや東南アジアの中小工業国・地域の見通しは、中国国内の景気回復よりも、米国や欧州におけるビジネス・サイクルの持続的改善により輸出が増加するかどうか次第でしょう。韓国や台湾、香港は2017年は2〜3%程度の成長にとどまると予想される一方、東南アジア諸国連合(ASEAN)経済は4.8%成長すると予想しています。こうした実質GDP成長率は、世界貿易の鈍い伸びという、全ての輸出依存国が直面している課題を反映して、概して過去のトレンドを下回っています。


コモディティ

2016年の価格回復が原油や金属の軟調局面が終了に近づいていることを示唆している可能性はありますが、コモディティ価格には引き続き弱気の見通しを持っています。ただし、トランプ大統領のインフラ投資計画の殆どが引き続き計画段階にとどまっているほか、中国がクレジット拡大を抑制していることもあり、コモディティ価格は弱含んでいます。私は、ここでは原油と金属という2つの主要コモディティに焦点を絞ります。

現在の原油価格の下落は、昨年11月の減産合意により油価が回復するとのOPECの希望を打ち砕きました。日量180万バレルの減産合意を受け、WTI原油価格は2016年11月から2017年2月の間に35%も上昇しました。しかし、それ以降、原油価格は20%下落して6月末時点では1バレル=44米ドルとなっています。

私は、米国のシェール・オイル業界が採算を度外視した生産者として急速に存在を高めているため、その価格破壊により、OPECの戦略は基本的に効果が見込めないだろうと考えています。 OPECの減産に対し、米国の産油会社は増産で対応しました。昨年11月30日のOPECの減産合意以降、米国の稼働リグ数は345へと60%、同産油量は7.4%、それぞれ増加し、今では日量933万バレルを産出しています。したがって、OPECが2018年3月まで減産継続で合意してはいるものの、原油価格の上昇が続くと予想することは難しい状況です。加えて、ナイジェリアとリビアがOPECの承認の下で増産を続けているほか、カタールと湾岸アラブ諸国との間に外交的亀裂が生じていることなどから、以前は効果が大きかったであろうOPECの減産も、それほど原油価格を押し上げるに至ってはいません。原油価格が異常に高い状態が何年も続いたため、世界の原油供給は需要のわずかな変化にすぐに反応して増加します。そうした新たな供給が最終的には市場に到達することを踏まえると、原油価格を上昇トレンドに引き戻すものは大幅な地政学リスク以外にはありえないでしょう。

金属に話を移すと、昨年年11月から今年3月の間、短期的投資家や他の市場参加者はトランプ大統領が自信満々にアピールしていたインフラ投資計画が実際に履行されるだろうと信じていました。それゆえ、鉄鋼や銅、その他のベースメタルの価格回復が広範に予想され、予想されたインフラ支出が増える前に金属市場全般にわたり、価格が上昇しました。しかし、現在はいかなるインフラ支出の増加も実現には程遠い状況にあります。銅と鉄鋼の価格は、上昇が止まったというよりは安定し、アルミと銅の価格は依然として、米国の大統領選挙以降に9.4%と12%、それぞれ上昇した水準にあります。亜鉛は同期間に5.6%上昇しましたが、おそらくは中国の亜鉛めっき鋼板の需要減退から若干反落しました。

中国の鉄鉱石や鉄鋼価格は、政府の政策、特にクレジットの拡大を抑え、コモディティへの投機を和らげ、非効率的な工場を閉鎖しようとする取り組みに反応しています。こうした取り組みが鉄鋼セクターの過剰供給を抑えたことから、中国の鉄鉱石価格は今年3月以降に36%も下落しました。政府がこれまでに閉鎖した正式な鉄鋼生産能力は、約5,000万トンと、削減目標の85%に達しています。当局はまた、違法な製鉄業者を完全に廃業させようともしています。中国国内の圧延鋼材は、同期間に供給が減少した一方、価格は16.6%上昇し、政府当局の取り組みが奏功していることを示しています。これは、生産が増加した公式統計とは対照的な結果ですが、その理由は、実質的には操業を停止した非公式な生産者の生産を公式統計が考慮に入れていないからです。


まとめ

米国大統領選挙後の4カ月間、先進国・新興国を問わず株式市場を左右したトランプ大統領の「リフレ・ラリー」は、現在も続いていますが、それはトランプ効果というよりも米国の景気サイクルの基調的拡大によるものです。はっきりしていることは、米国の債券利回りが低下してきており、経済活動やインフレが弱まりそうだということです。

米国の回復は今や他の地域にも伝播しています。欧州や日本、その他アジアのパフォーマンスの改善は、米国の景気拡大の波及効果によるところ大です。

米国ではFEDが(金融政策の引き締めというよりは正常化のため)4回の─直近では6月に─利上げを行いましたが、現在、最も重要なことは、FEDがバランスシートを縮小しても米国のマネーやクレジットの伸びが年率6〜8%を維持できるかどうかということです。もし、(FEDのバランスシートにおける引き受け減少により)増加した米国債やエージェンシー債の入札が民間部門へのクレジットを阻害したり、一部の銀行のリスク回避姿勢を招くようであれば、2018年の本格的な景気減速リスクが高まることになります。これは私のメイン・シナリオではありませんが、投資家はこのことに留意する必要があるでしょう。

 

 

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