高田 充康氏

INTERVIEW

ブロックチェーン 有識者とつながってみた
Vol.3 前半 日本アイ・ビー・エム株式会社 高田 充康氏

2019年10月28日

世界を変える技術と言われるブロックチェーン、それによる変化は始まったばかりであると考えられます。
インベスコ・アセット・マネジメントでは、その変化の最先端にいる有識者との対談を通じて、ブロックチェーンの可能性をお伝えしていきたいと考えています。
ブロックチェーンという技術革新によって、従来の感覚では想像もつかなかったサービスや仕組みが出てくることでしょう。
そんな明るい未来の一端を少しでもご紹介できればと考えています。

第3回目の有識者は、日本アイ・ビー・エム株式会社でブロックチェーン・ソリューションズ事業部長を務める高田 充康氏です。高田さんは大学卒業後、日本アイ・ビー・エム株式会社に入社し、以来、システム・エンジニアや技術営業としてご活躍をされてきました。2018年からブロックチェーン事業の責任者に就任され、様々な企業にブロックチェーンに関するソリューションやアドバイスを提供されています。

今回は、世界有数のコンピューター関連企業であるアイ・ビー・エムのブロックチェーンへの取り組みをご紹介いただくと共に、日本でブロックチェーン・ビジネスを推進されている高田さんのご経験を通じて、実際の導入事例などについてもお話いただきます。

高田 充康氏
高田 充康氏
インベスコ: 最初に、日本アイ・ビー・エムでのブロックチェーンの取り組みから教えていただけますか?
高田: 当社ではブロックチェーンに比較的早くから取り組んできました。当初は、金融機関のお客様からの依頼が多く、銀行や証券会社などで実証実験を手掛けました。私どものビジネスのチームでも、金融をバックグランドに持つ人間を集めました。ところが、昨年くらいから、金融以外のお客様のブロックチェーン活用が非常に増えてきています。
インベスコ: ブロックチェーンが金融以外にも広がってきているということでしょうか?
高田: はい。当社ではハイパーレッジャー・ファブリックというブロックチェーン技術の開発を主導してきましたが、足元、これに関連するプロジェクトについては、金融以外のものが7〜8割を占めており、様々な分野に波及し始めていることが伺えます。世界的にみると、金融以外では、『食の信頼』、『国際貿易』、『資源調達』といった分野で活用が進んでいます。
インベスコ: そうなんですね。では、実際の活用事例を教えていただけますか?
高田: 一つめの活用事例として、『食の信頼』をご紹介しましょう。スーパーマーケットなどの小売業者は、販売した食品で消費者が食中毒を起こしてしまった場合、原因を究明しなければならず、産地での収穫から納品までの間に携わった業者等に確認し、流通過程のどの点に不備があったのかを追究する必要があります。しかし、産地まで遡って正確な情報を把握することは極めて煩雑であり、特に海外からの輸入品などになると関係者が増えるため、より多くの時間を要することになります。ブロックチェーンは、こうした課題を解決するものだと考えられます。
インベスコ: 課題を解決するものとは、どのようなものなのですか?
高田:ブロックチェーンを活用した流通管理システムです。農場から店頭までの流通過程がブロックチェーンに記録されるため、即座に追跡可能というものです。これまでの追跡の手間を一変させるもので、実際に米国のウォルマート社が実験したところ、海外から輸入したマンゴーについて、実際に産地の農場を突き止めるまでに約1週間を要しましたが、ブロックチェーンを活用した追跡手法であれば、たった2.2秒で農場を特定することが可能になりました【図表1参照】。

【図表1】ウォルマート社によるトレーサビリティ(追跡)実験の結果

店頭の海外から輸入したマンゴー
農場まで追跡するのにどれくらいの時間がかかるか?
【図表1】ウォルマート社によるトレーサビリティ(追跡)実験の結果
複雑な流通過程を辿る必要がある
【図表1】ウォルマート社によるトレーサビリティ(追跡)実験の結果
出:日本アイ・ビー・エムの資料を基にインベスコ・アセット・マネジメントにて作成
※所上記はイメージであり、実際とは異なる場合もあります。
インベスコ: それは劇的な変化ですね。このシステムはもう稼働しているのですか?
高田: このトレーサビリティ(追跡)の技術は、2018年10月に「IBM Food Trust」という名称で商用化されました。当該プラットフォーム上には約7,000種類の商品の900万件にのぼる取引が記録され、500万種類以上の陳列商品が登録されています。膨大な取引記録等をすべてデジタル化し、食品小売業界を横断して『食の信頼』を実現する共通基盤を作り上げることで、業界全体の信頼獲得にも繋がります。
インベスコ: なるほど。複数の生産者や小売業者がこのプラットフォームに参加し、利用しているのですね。
高田: こうしたトレーサビリティや情報の共有は、まさにブロックチェーンの優位性と言っていいでしょう。更に、様々なデータを蓄積することで、元来トレーサビリティの目的で使用されていたプラットフォームから、新たな付加価値を生み出すことも可能だと考えられます。例えば、食品が収穫されてから陳列に至るまで、すべての行程を可視化して物流の効率性を向上させるなど、新たなサービスも登場し始めています。

<次回(後半)に続く>
後半の内容は、こちらをご覧ください。

上記は2019年9月5日の高田氏への取材を基にインベスコ・アセット・マネジメントにて作成。

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