周藤 一浩氏

INTERVIEW

ブロックチェーン 有識者とつながってみた
Vol.2 前半 株式会社野村総合研究所 周藤 一浩氏

2019年9月3日

世界を変える技術と言われるブロックチェーン、それによる変化は始まったばかりであると考えられます。
インベスコ・アセット・マネジメントでは、その変化の最先端にいる有識者との対談を通じて、ブロックチェーンの可能性をお伝えしていきたいと考えています。
ブロックチェーンという技術革新によって、従来の感覚では想像もつかなかったサービスや仕組みが出てくることでしょう。
そんな明るい未来の一端を少しでもご紹介できればと考えています。

第2回目の有識者は、株式会社野村総合研究所の金融DXビジネスデザイン部の周藤一浩氏です。周藤さんはコンピューターのエンジニア出身で、中国の精華大学でMBAを取得した後、現在は、フィンテックや暗号資産(仮想通貨)を含めブロックチェーンに絡む金融ビジネスのリサーチやコンサルティングを行っています。

今回は、企業の事業戦略をアドバイスしている周藤さんのご経験を通じて、ブロックチェーンの可能性だけでなく、ビジネスの現状などについてもお話いただきます。

周藤 一浩氏
周藤 一浩氏
周藤: まず最初に、野村総合研究所ですが、リサーチ、コンサルティング、ソリューションの各領域でブロックチェーンに関する取り組みを推進しています。また、2019年6月には、野村證券と共同して、ブロックチェーンを活用した有価証券ビジネスの合弁会社の設立を発表しました。こうしたことの背景には、ブロックチェーンのインパクトの大きさがあります。様々な会社が出している市場規模の予測で見ても、5年後には現在の5〜10倍くらいになると言われています。長期では、IT調査会社ガートナーの予測で、2025年には約19兆円、2030年には約340兆円といったものもあります。
インベスコ: これほどの成長が予測されているのなら、企業の取り組みも積極的なのでしょうね。
周藤: そうですね。ブロックチェーンの取り組みには積極的です。しかし、新しい技術、新しい概念ゆえに、順調な面ばかりではありません。例えば、PoC(概念実証)疲れとも言えるのですが、検証ばかりしていて、実装がなかなか進まない面もあります。これには、ブロックチェーンが基盤技術だからこその理由もあって、標準化が難しいこと、法規制が伴わないことなどが考えられます。とは言え、インターネットもかつてはカオスで、20年かけて標準化が進んだことを踏まえ、ブロックチェーンも似たような状況と見ています。ですから、取り組まないとならないことは確かでしょう。
インベスコ: 新しい技術が実用化されていく過程なのですね。一方、実用化が進んでいる分野はあるのですか?
周藤: 暗号資産(仮想通貨)は進んでいると思います。ビットコイン以外でも、発展、拡張する形で、様々な暗号資産(仮想通貨)が登場してきています。性能の点では、取引スピードが向上したビットコイン・キャッシュ、機能の点では、ブロックチェーン上でデータだけでなくプログラムも記録・実行できるイーサリアムなどを起点に多様な発展をしています。
インベスコ: 暗号資産(仮想通貨)は、いろいろな種類が出てきて進化しているのですね。
周藤: 種類だけでなく、各暗号資産(仮想通貨)を相互交換できる仕組みや、ブロックチェーンへの参加を信頼できる関係者に限定することでプライバシーや情報管理を強化した仕組み(コンソーシアム)も登場してきています。最近、話題のフェイスブックが主導するリブラもコンソーシアムの一例です。
インベスコ: 今後は、どんな分野でブロックチェーンの活用が期待できそうですか?
周藤: まずは、金融系がメインと言えるでしょう。決済、送金での活用に限らず、ブロックチェーン上で現実世界の資産をデジタルアセット化していくことで、更なる拡大が期待できます。ブロックチェーンによるデジタルアセットのビジネスは、いくつかの機能が層になって機能すると考えられます【図1】。現在、各層のビジネスで、起業や参入が活発になっています。@基盤技術層は、先に挙げたビットコイン、イーサリアム、リブラなどの暗号資産(仮想通貨)を支えるブロックチェーン基盤です。その基盤の上に、Aトークン層があり、何らかの権利や資産をブロックチェーン上にトークン化して記帳するビジネスです。トークンを流通させるB流動化層は、取引所や交換所といったビジネスです。そして、一番上のCアプリ層がブロックチェーンと外の世界をつなぐアプリケーションのビジネスです。

【図1】デジタルアセットの産業構造イメージ

四條 能伸氏
出所:野村総合研究所の資料を基に当社にて作成
※上記はイメージであり、実際とは異なる場合もあります。
インベスコ: トークン化するとは、どういうことなのでしょうか?
周藤: トークン化は、何らかの権利をブロックチェーン上に記帳することです。デジタルの権利証ですから、売買などの取引が可能です。つまり、デジタルアセット化です。有価証券や不動産などの現実世界の資産を裏付けとした権利をトークン化することも技術的には可能です。法規制が進めば、こうしたデジタルアセットは、大きなビジネス機会になると期待しています。
インベスコ: トークンとコインは違うのでしょうか?
周藤: 明確な定義があるわけではないのですが、違うものとして考えると理解しやすいです。コインは、それ自体でブロックチェーンを構築していて、基盤技術として稼働しているものです。すなわち、ビットコインやイーサリアムなどです。一方、トークンは、既存のコインの基盤技術を利用して発行されたものです。例えば、既存のイーサリアム(コイン)に相乗りする形で、新しいトークンを発行するといった言い方がされます。

今回は、周藤さんのご経験に基づいて、ビジネスの現場で、ブロックチェーンがどのように活用されていて、それがどれくらい進んでいるのか、そして、デジタルアセットへの期待などをお話していただきました。次回は、金融以外でのブロックチェーンの活用や産業構造についてもお話いただきましたので、そちらの内容をご紹介させていただきます。